| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-103
切り立った断崖に囲まれた大台ヶ原(標高域1300-1700 m)において、ニホンジカは周辺域との季節移動をしていることが個体レベルの追跡により明らかにされつつある。さらに大台ヶ原周辺部における集団レベルでのニホンジカ分布の連続性と季節性、大台ヶ原に至る道路沿道のシカによる利用状況に関する情報を得るため、2006年11月から2008年10月の積雪期を除く期間に、大台ヶ原ドライブウェイ(走行距離約20 km、標高711-1571 m)においてスポットライトカウントを実施した。52回のカウントにおいて、のべ2285頭が観察された。4-11月には区間(標高域)全体にわたって観察され、この時期には大台ヶ原と周辺域のシカの分布は連続的であると考えられた。2007、2008年ともに6-7月に観察数が最大になり、大台ヶ原標高域に相当する区間で季節変化が大きくなる傾向がみられた。発見時の行動を記録できた1916例のうちでは、採食(1618例84.4%)が大半を占めた。さらに採食のうちでは、法面の緑化工や盛土の二次草地(1235例76.3%)、大台ヶ原地区内のミヤコザサ(282例17.4%)が上位を占めた。法面は見通しがよいために観察数が多くなりやすいと予想されるが、シカの採食により下層植生が既に衰退している地区では沿道の人工的草地が重要な餌場となっている可能性が考えられる。