| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-104

コウノトリ採餌適地モデルによる湿地環境の評価

*竹下邦明(復建調査設計株式会社),三橋弘宗(兵庫県立人と自然の博物館),若宮慎二(復建調査設計株式会社),神谷毅(国土交通省豊岡河川国道事務所),日下慎二(国土交通省豊岡河川国道事務所)

円山川水系出石川に隣接する水田地域(約15ha)で実施したコウノトリ行動調査の結果をもとに、採餌適地モデル構築および行動圏解析を行い、コウノトリの採餌に適した湿地の環境条件について検討した。解析ユニットとして、20mメッシュで対象地を区切り、採餌による通過回数を従属変数に、水田の水深および畔からの距離を独立変数に、さらに空間要因としてX、Y座標の値を用いて、GLMおよびGAMにより統計解析を行った。解析の結果、GLMよりもGAMの再現性が高かった。これは環境要因が非線形応答するためと考えられる。GAMの結果によれば、1月には水深が浅い部分を選好し、8月には畦に近い場所を選好する傾向がみられた。ただし、いずれの季節も顕著な環境選択性はみられず、コウノトリは多様な場所を探索的に利用していると考えられた。実際の利用場所やコアとなる行動圏(Kernel法)の環境要因を解析した結果、行動圏は8月に広く、1月には集中する傾向がみられた。このような季節による差異は、餌生物の分布状況に関係すると考えられる。例えば、8月では水域にアメリカザリガニやドジョウが、畔にはコバネイナゴ等が広く分布しているが、1月になると畔に分布する動物は非常に少なく、アメリカザリガニが限られた水域の地中で越冬している程度となることなど、餌アイテムの多様性が関連すると思われる。これらの結果をもとに湿地整備における配慮事項として、畦に近い浅場の存在が重要であり、大規模な単一の開放型湿地よりも小区画に区切られた閉鎖型湿地のほうがコウノトリの採餌場所としての整備効果が高いと考えられる。


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