| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-106

北淡路棚田地帯の放棄農地における和牛放牧による畦畔草原保全の可能性

*中川瑠美(淡路景観),澤田佳宏(兵庫県大・緑環境/淡路景観),藤原道郎(兵庫県大・緑環境/淡路景観),山本聡(兵庫県大・緑環境/淡路景観),大藪崇司(兵庫県大・緑環境/淡路景観)

未整備の畦畔の草原は草原生植物の生育の場として重要である.しかし,多様な草原生植物を有する未整備畦畔は中山間地にあることが多く,過疎や高齢化のために放棄されやすい.北淡路の棚田地帯では管理放棄による草原の喪失が進行しているが,ここ数年,放棄された畦畔での和牛放牧が試験的に行われ始めている.和牛放牧は,遷移の進行を抑制する攪乱であり,半自然草原の保全に有効かもしれない.そこで,草原生植物の保全への和牛放牧の有効性を検討することを目的とし、北淡路の棚田地帯において植生調査を行った。調査対象畦畔は,(1)圃場整備の行われていない「未整備区」、(2)圃場整備の行われた「整備区」,(3)管理放棄後約10年の「放棄区」、(4)放棄後,年1回3月に刈りとりがおこなわれる「年1回刈り区」,(5)和牛放牧が行われている「放牧区」の5タイプとした.なお(5)の放牧区は,一度放棄され約10年が経過した後に放牧が開始され,現在,放牧2年目である.植生調査により得られた結果をTWINSPANで解析した結果,第1の分割では,(1)(2)(5)と(3)(4)に区分され,放牧は,放棄区よりも,未整備区や整備区の畦畔に近いことが示された.(1)(2)(5)のグループの第2の分割では,主に(2)からなるグループと,(1)(5)からなるグループに区分され,放牧区は,整備区よりも未整備区に近い組成を持つことが示された.放牧区では,ツリガネニンジン・ヤマハッカ・アキノタムラソウ・ネコハギなど,未整備畦畔を特徴づける草原生植物が確認されており,和牛放牧は保全に有効であることが示唆された.


日本生態学会