| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-124

カジカにとって湧水は大事なのか:都留市戸沢川におけるカジカの分布と河川環境との関係

*荒木友子,中林拓人,堀綾乃,堀江祐香,岡田淳,甲斐美帆,小林由季,永坂優真(都留文科大学),一柳英隆(ダム水源地環境整備センター)

カジカ大卵型Cottus polluxは、河川の上流〜中流に生息する日本固有の魚類である。古くから食用などとして人間に利用されてきた種であるが、1960年代以後生息環境の悪化等により減少し、環境省レッドリストでは絶滅危惧種IB類に指定されている。山梨県東部にある都留市でも同様のことがおきていると考えられ、その実態を把握し、個体群サイズを回復させることを目的として調査を行った。調査は、都留市内を流れる菅野川(長さ10.8km)とその支川の戸沢川(長さ4.4km)、およびそれらへの流入支川を対象とした。まず、住民への聞き取りにより過去の分布を、現地での捕獲により現在の分布を調査した。その結果、以前は流入支川を含めてこの流域に広く分布していたものの、1950年代から1970年代にかけて減少し、現在は流域内に断片的に生息しているのみであることがわかった。また環境調査により、現在の生息地は物理的環境(水深・流速・河床材)が好適であるとともに、湧水が流入していることが確認された。それを受けて次に、湧水のどのような要素が、空間的にどの程度カジカの生息に影響しているのかを把握するための調査を行った。戸沢川の湧水が流入していると推定される地点の前後約1.4km区間において、水温・水質を中心とした環境項目の連続的な流程変化を周年的に調査した。同時にカジカの密度・繁殖・成長・生残を調査し、これらを環境変化と対応づけた。この結果は現在解析中であるが、今回の発表では中でも水温に着目して、カジカの生息への影響を報告する。なお、この菅野川・戸沢川のカジカの保全に関しては、地元住民による「三吉地域協働のまちづくり推進会」と連携した活動が始まっている。


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