| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-125
農村域の二次的自然環境における生物多様性の高さが指摘されて久しいが、二次草地の面積は近年著しく減少しており、それに伴い草原性動植物の減少が危惧されている。水田の畦畔は、長期的に維持・管理されてきた二次草地といえ、現在も多くが残存する。なかでも棚田は法面の存在によって、投影面積に対して実質的により広大な草地面積を有する環境である。またこの棚田特有の畦畔法面は、これまで草原性植物やカエルの生息環境としての意義が示されており、生物多様性保全の視点から棚田畦畔は重要な役割を果たしている可能性がある。しかし、動物を含めた草原性生物の生息地としての棚田畦畔に着目した研究はまだ少ない。
本研究では、棚田草地の特徴の一つである林縁草地との関連性が予想されるニホンカナヘビを用いて、その生息適地を検討した。また同時に、餌である節足動物相の生息量と、捕食者としてのカナヘビの食物網における位置を明らかにした。これにより、棚田草地におけるカナヘビの指標性を評価することを目的とした。
調査は、千葉県鴨川市における農村域の代表的な草地景観として棚田・平田・新植地・林道の草地部分を対象として、目撃確認法によるカナヘビの生息調査をおこなった。また、コドラート法による節足動物相の生息調査と、安定同位体比を用いたカナヘビの栄養段階の推定を行なった。その結果、秋季ではカナヘビの棚田への選好性がうかがわれ、その要因として、棚田の特徴である林縁草地の重要性が推測された。