| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-129

切株から推定するスラムの違法伐採嗜好性-枝先に行かねば塾柿は食えず!?-

*古川拓哉, 藤原一繪 (横国大・院・環情), S. Kiboi, P.B.C. Mutiso (Univ. of Nairobi)

発展途上国の農村や都市貧困層の多くは燃料の多くをバイオマス資源(薪炭など)に依存している。地域によっては森林減少や人口増などを背景とした過度の伐採により、資源量が著しく減少しており、貧困層の生活や生態系への悪影響が懸念される。ケニア共和国の首都ナイロビの政府保護林でも、隣接するスラムの人々による違法伐採活動により、植生荒廃や資源の減少などが懸念される。

適切な資源管理のためには、森林資源の利用パターンの把握が不可欠である。これまで、農村域における研究では、特定の樹種やサイズに対する嗜好性が明らかになっている。また、一般に居住地に近いほど薪炭収集活動は活発であるが、資源減少に伴い収集にかける時間や距離が長くなるとされる。このような研究では、薪炭収集者の協力を得、面談調査や収集された薪炭材の調査などを行なうのが主流だが、違法伐採にはこうした調査方法は向かない。そこで本研究では、前述のスラムに利用される保護林内に残された伐採痕を調査することで、違法伐採活動の実態を明らかにすることを目的とした。

調査は、対象の森林(約500ha)を250×250mメッシュに分割し、各メッシュ内を踏査して行なった。切り口の直径3cm以上の伐採痕と胸高直径3cm以上の幹(萌芽幹含む)を調査対象とし、その樹種と直径を記録した。

結果、スラムに近く、レンジャーの詰め所から遠いところにある大きい木がより切られやすいことが明らかになった。一方で、嗜好性が高い樹種の中には森林の奥まで伐採が進行しているものも多く、それなりのコストをかけて収集していることが明らかになった。


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