| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-132

滋賀県におけるハタネズミの生息地評価

*松浦宜弘,高柳敦(京大院農),柴田昌三(京大フィールド研)

ハタネズミ (Microtus montebelli)は、本州・九州の平野部の河川敷や農耕地、若齢造林地、高山帯の草原などに生息する草食性の小型哺乳類である。分布の中心は東北地方であり、西日本では東北地方に比べ比較的稀なネズミである。かつては全国で農林業被害を出すほど多く生息しており、害獣として1970年代を中心にその生態などが研究されていた。しかしながら、現在は、農地転換や若齢造林地の減少、河川敷のコンクリート護岸により、生息地が減少し、西日本を中心として個体数が減少していると言われている。そのため、いくつかの県では、レッドリストに登録され始めた (準絶滅危惧種:大分県・愛知県・神奈川県など)。本調査地である滋賀県でも個体数の減少が懸念されている。しかし、今までの研究の多くは、農林業被害の報告や防除のための生態研究に偏っており、保全に関する研究はきわめて少ない。

そこで本研究では、河川敷を対象に滋賀県全域から10河川 (サイト)を選定し、そのサイトをそれぞれ数十ヶ所のユニットに分割し、ユニットごとに地理的・気候的要因 (標高や年間降水量など)と生息地の微環境要因 (植生)からハタネズミの生息地評価を行った。

2009年春に行った生息調査で、30分間の痕跡調査センサスにより全313ユニットのうち46ユニットでハタネズミの生息が確認された。これらのユニットで生息地評価を行った結果、滋賀県においてハタネズミの生息には、生息地の植生が最も重要であり、さらに周辺に農耕地が広がることも生息に重要な要因であると示唆された。ハタネズミの保全には、選好する植生とともに、周辺環境を保全することが重要であると考えられる。


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