| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-145
ナラ枯れとは、体表面に病原菌であるナラ菌を付着させたカシノナガキクイムシ(通称カシナガ)が健全なナラ類に穿入することで、樹幹内にナラ菌が繁殖して樹液の運搬を阻害してしまうために起こるナラ類の集団枯死のことである。被害拡大を防ぐために今日では数々の防除法が開発されており、また、その防除法を効率的に行うためにGISを駆使したナラ枯れ病の拡大予測も積極的に行われ、その精度も上がってきている。カシノナガキクイムシはナラ以外の樹種にも穿入するうえ、針葉樹やブナ、その他広葉樹は穿入されても枯死せず、カシナガ自身の繁殖成功度も下がることがわかっている。したがって、病気の感染や罹病には、周辺の植生やその森林の組成が影響すると考えられ、病気に対する抵抗性の景観レベルでの対策ができる可能性がある。しかし、これまでの研究ではこうした景観レベルでの植生の影響が十分には考慮されていない。そこで、森林の樹木組成や周辺の植生が被害拡大を抑制しうるかどうか、抑制しうる場合の空間スケールを明らかにするため、ナラ枯れ病が全域に蔓延している山形県鶴岡市において、ナラ類のナラ枯れ病による生死と、その個体の周辺10m内の植生、更にGISを利用し周囲100m、1000mの景観レベルでの植生を調べた。これらのデータをもとに、ナラ枯れ病を抑制しうる植生の状況と効果のある空間スケールについて論ずる。