| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-146
農業を中心とした人間活動により多様な土地利用がモザイク状に維持される里地里山は、特定の環境にのみ依存する生物だけでなく複数タイプの環境を必要とする生物を含む多様な生物に好適な生息場所を与えてきた。したがって土地利用のモザイク性は里地里山における生物分布を規定する重要な要因の一つであると考えられる。一方で、生物やその餌の移動分散スケールは対象によって異なるため、分布に影響するモザイク性の空間スケールや単位となる生息地の面積(解像度)は生物種(群)に応じて異なることが予想される。
そこで本研究では、里地里山における土地利用のモザイク性と生物分布の関係を定量的に分析することを試みた。福井県において平成13年・14年に実施された市民参加型調査の結果で得られたデータの中からカメ類,カエル類,淡水魚類,水生昆虫類に属する計22種の在不在情報を分析に供した。土地利用のモザイク性は、複数の空間スケール(2km四方,6km四方,10km四方)の内部に含まれる土地利用の多様度を、シンプソンの多様度を用いて指数化した。その際解像度について複数の値 (50m,500m,1000m) を用いた。土地利用のモザイク性に対する対象分類群ごとの応答だけでなく、高次分類群に共通な応答も把握するため、階層ベイズ法を用いて解析を行った。
解析の結果、土地利用のモザイク性は多くの分類群の出現に対して、空間スケールや解像度によって異なる正の効果を及ぼしていた。ここで得られた知見は、里地里山における生物の生息適地予測や生物多様性評価に活用可能な土地利用のモザイク性の指数化に寄与するものと考えられる。