| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-153

植物の多様性からみた亀岡市の水田の石組畦と盛土畦の保全上の意義

岡本奈保子,今村彰生(京都学園大学バイオ環境)

京都府亀岡市曽我部町は地勢としては亀岡盆地の一部であり、稲作地帯である。当地の水田地帯は大規模な農地基盤整備を経験しておらず、条里制水田に由来する畦の形状や田越し灌漑のための水路などが残存する。

当地一帯で農地基盤整備が計画されているため、当地の生物多様性が失われる可能性がある。そこで、畦の植物相を調査し、その種組成と畦の環境条件(畦の組成、高さ、斜度、畦内での部位など)との関係を明らかにすることを目指した。

2009年7月13日から2009年10月5日にかけて、畦24本について植生調査を行った。畦内の部位として、前畦、平坦面、畦畔草地、小溝、中畦の5つの部位に分け(山口、梅本1997を参照)各部位ごとに生育する全植物の種名と結実、開花状態を記録した。調査地各部位の幅、前畦と畦畔草地の斜度、水田から平坦面までの高さ、畦の組成、畦畔草地の向き、小溝の有無を計測し記録した。

記録した植物の総科数は52科、総種数は201種(不明種は含まず)であった。内訳は、1年草が82種、多年草が77種、越年草が38種、木本が14種(つる性木本を含む)であった。各調査畦の部位ごとに出現する種数を応答変数とし、生活型ごとに一般化線形モデル(GLM)で解析を行った。その結果、1年草は平坦面で多く、盛土畦で多かった。越年草も平坦面で多く、盛土畦で多かった。多年草は畦畔草地で多く、石組畦で多かった。木本(つる性木本を含む)については、有意に影響を与えている要因が認められなかった。

基盤整備では、中畦や石組畦が減少することが予想される。上記の結果を踏まえると、石組畦でより多く見られる多年草群集について、とくに大きな影響があると予想される。

これらを踏まえ、基盤整備による多様性の減少を抑えることや、整備後の多様性の回復に有益な示唆や方策があるのかについて、来聴者と情報交換し、議論したい。


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