| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-272

樹木伐採が森林土壌のCO2フラックスに与える影響

*谷貝勇樹(名大院・生命農),仁科一哉,竹中千里(名大院・生命農)

森林は温室効果ガスであるCO2の吸収源として期待されており、日本ではその効果を最大限に発揮するため間伐が進められている。間伐は、森林土壌におけるCO2 フラックスに影響を与えることが報告されているが、その詳しいメカニズムはよくわかっていない。本研究は、樹木伐採による根の活性低下、すなわち根呼吸の減少に焦点を当てた。根の活性低下によるフラックス変化は、根の分布状態に依存することが予想される。そこで、樹幹からの距離でフラックス変化がどのように異なるかを調べることによって伐採の効果を評価した。また、根呼吸に重要な役割をもつ細根に着目し、伐採による細根密度変化とCO2 フラックスの関係を調べた。

本実験は名古屋大学演習林に生育する35年生のスギ林で行なった。互いに十分に離れた対象木を5本選定し、各対象木において斜面上、右、下、左の4方向に、樹幹から50 cm、150 cmの位置にフラックス測定用チャンバーを設置した。2008年5月から2009年11月まで計18回のCO2フラックスの測定を行なった。伐採は2009年7月に行った。また、細根分布測定用にさらに3本の樹木を伐採し、伐採前後の細根密度の測定を樹木からの距離別に行った。併せて、地温、土壌水分の観測を行なった。

測定の結果、伐採後1年目はCO2 フラックスは減少し、その減少量は樹木からの距離が50 cmの地点でより大きくなる傾向を示した。しかし、伐採後2年目は樹木からの距離によってCO2フラックスに差は見られなくなった。このことから、伐採による樹木根活性の低下はCO2フラックスに影響を与えるが、その影響は短期的であることが示唆された。

細根密度に関しては、伐採前は生根、死根とも樹木からの距離によって明らかな差は見られなかった。しかし、伐採後は両地点において死根密度の明らかな増加が見られた。


日本生態学会