| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-279
ヒノキの一次生産に対する雄花生産への分配は光資源や窒素資源の影響を受けている。伐採すると、光や窒素資源の増大に伴って残存木における繁殖への分配が変化することが予想される。本研究では、窒素資源の異なるヒノキ林分で強度な伐採を行い、残存ヒノキの繁殖分配に窒素資源が及ぼす影響を明らかにした。
京都のヒノキ二次林に3林分、高知のヒノキ人工林に3林分を設定した。各林分に2つの調査区を設定し、一方は強度な伐採を行う伐採区、もう一方は無間伐または間伐率25%未満の伐採を行う対照区とした。リターフォールを2005年から2年間にわたって採取した。器官ごとに重量と窒素濃度を測定し、種子、球果、雄花、全繁殖器官の重量がヒノキの全リターフォールに占める割合を求めた。窒素資源の指標にはヒノキ落葉の窒素濃度を用いた。各年の繁殖分配を伐採と落葉窒素濃度から予測する共分散分析をおこなった。
繁殖器官の生産量が多かった2005年には、伐採と落葉窒素濃度の交互作用について、種子と全繁殖器官では有意な影響が(p<0.05)、雄花でも同様な傾向が認められた(p=0.08)。全繁殖器官では、伐採の主効果にも有意な影響が認められた(p<0.05)。落葉窒素濃度が低いほど、対照区では繁殖分配が低下するのに対し、伐採区では増加する傾向が認められた。2006年の各器官における繁殖分配には、伐採と落葉窒素濃度の有意な影響は見られなかった。以上の結果、繁殖器官の生産が多い年には、窒素資源が少ない林分ほど伐採後に繁殖分配が大きくなることが明らかとなった。窒素資源が乏しい林分での強度な伐採は繁殖器官の生産を増大させることが示唆される。