| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-286

道東の天然林およびカラマツ人工林で斜面方位が土壌特性とリターフォール量に与える影響

*菱 拓雄(九大北演),前田由香(九大生資),田代直明(九大北演)

斜面上の位置や方位は集水条件や日射量の違いに伴い植生構造が異なることが知られている.こうした植生の違いは供給されるリターの質の違いを通して土壌の分解者群集の構造に影響し,分解過程に関わる分解者の構造に影響する.本研究では北海道東部に成立している冷温帯性落葉性広葉樹天然林およびカラマツ人工林において斜面の位置と方位が森林の生産性や土壌の特性にどのような影響を与えるかを調査した.

それぞれの立地における生産性の指標としてリターフォール量,生産性に対する養分の利用効率を葉のNUEを用いて評価した.NUEは葉リターフォール量を全窒素含量で割った値を用いた.各立地の地下部投資量として細根量を調べた.土壌は断面を作成し,有機物層とA層の厚さを測定した.有機物層および表層から深さ4−5cmの土壌を持ち帰り,各立地の有機物堆積量と土壌のC/N比を測定した.また,0−8cmの土壌動物をハンドソーティングによって採取した.ミミズについては深さ40cmまでのハンドソーティングを行った.

天然林,人工林ともに表層土壌の含水率は尾根側で低く谷側で高く,北斜面よりも南斜面でその傾向は強かった.土壌のC/N比は谷部や北斜面下部で低く,南斜面の上部が最も高かった.有機物層の厚さは南斜面で厚く,北斜面及び谷部で薄かった.表層土壌の細根量は南斜面で多く,北斜面や谷部で少なかった.これらの結果は谷部および北斜面は分解が速く生産的な湿潤立地で,南斜面は分解が遅く生産量の低い乾燥立地であることを示している.大型土壌動物の群集構造は大きく南斜面と北斜面・谷部の二つに類型された.ミミズの密度は南斜面で北斜面・谷部よりも低かった.


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