| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-291
落葉広葉樹林全体の総光合成量は顕著な季節変化を示すと共に,気象条件の変動により大きな年変動を示すことが知られている。このような季節・年変動の理解のためには,生理生態学的な視点は有効である。本研究では,冷温帯落葉広葉樹林における林冠木および林床植生の個葉の光合成特性の季節変動とその年変動を明らかにするため,長期・学際的な炭素循環研究が行われている高山サイト(乗鞍岳山麓,岐阜県高山市)において,林冠の優占樹種であるミズナラおよびダケカンバを材料として,個葉の光合成能(Amax,Vcmax),暗呼吸速度,LMA(leaf mass per area),クロロフィル含量を季節を通じて6年間にわたり測定した。また,林床の優占種であるクマイザサ(常緑)についても,同様の測定を行った。
ミズナラ,ダケカンバは共に融雪の2−3週間後(5月中旬から下旬)に展葉を開始した。展葉後,ミズナラは徐々に,ダケカンバは直ちに光合成能が上昇したが,その上昇速度や最大値,および最大値に達した時期はそれぞれ年によって大きく異なっていた。LMAは展葉後から落葉までの期間に徐々に増加し続けた。VcmaxはLMAとの間には相関が見られなかったが,SPAD値(クロロフィル含量の指標)との間には高い相関が認められた。
一方,クマイザサは,前年から残る葉(越年葉)に加え,6月上旬から中旬にかけて新たな葉(当年葉)を展葉させた。6月上旬,当年葉のVcmaxは越年葉の約1/2だったが,その後,当越年葉はわずかに,当年葉は大きく上昇し,7月下旬には当年葉の値が越年葉を上回った。