| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-292
近年、日本各地の里山において竹林が拡大しており、特に管理が行き届いていない広葉樹林やスギ・ヒノキ人工林への外来植物であるモウソウチクの侵入が問題となっている。タケの侵入が森林生態系に及ぼす影響についてはさまざまな研究が行なわれつつあるが、物質循環系への影響に関する研究例はほとんどない。そもそも日本の竹林における物質循環の研究例が少なく、基礎的なデータが不足している。一般に、タケはイネ科でケイ酸集積植物として知られていることから、竹林におけるケイ素の循環は特異的であることが推測される。しかし、竹林におけるケイ素循環を研究した例は少なく、微量元素動態についての報告もほとんどない。本研究ではモウソウチク林におけるケイ素および微量元素の動態の基礎的な知見を得ることを目的とし、特に葉中元素濃度、土壌水中元素濃度の季節変化およびリターフォールによる元素供給量などを調べた。
調査は、愛知県豊田市および瀬戸市(計3箇所)のモウソウチク林内に設定した15 m×15 mの区画で行った。区画内のタケ5本を選抜し、2008年6月から2009年5月まで毎月1回タケの枝葉を採取し、葉中元素濃度を分析した。また、各サイトの区画内に10 cm、20 cmの深さにそれぞれ土壌水採取器を5本ずつ設置し、2008年8月から2009年6月まで土壌水中元素濃度を分析した。その結果、Ca、Mn、Siなどの葉中濃度は、年間を通して増加傾向であった。一方、Bは全てのサイトで同調的な増減を示し、非常に特徴的な季節的変化をすることが明らかとなった。土壌水中Si濃度は、8月から10月にかけて上昇し、その後翌年の春にかけて低下する傾向が見られた。