| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-313
日本に広く分布する火山灰土壌(黒ボク土)には世界的に見ても極めて多量な腐植物質(土壌有機物)が分布しており、その特徴は黒味が強く、ベンゼン環構造の濃縮によって特徴づけられることから、微生物にとっても利用しにくい安定性が高い腐植物質であると考えられている。このような特徴を有する黒ボク土において、長期間ススキ草原として維持管理している場合と、維持管理を放棄し針葉樹林(遷移後30年)へと地上植生群が遷移した場合とで、表層の腐植物質の量や質がどのように変化するのか?を定量分析、HPSEC分析および液体13C NMR分析で比較した。さらに腐植酸を分取HPSEC法で細分画し(10分画)、各画分の炭素および窒素安定同位体比を測定し、腐植酸の量および質的変化メカニズムについても考察した。
筑波大学菅平高原実験センター内ススキ草原,アカマツ林(遷移後30年)黒ボク土表層(0−20 cm)の腐植酸,フルボ酸量をCベースで定量した。また,各試料の分子サイズをHPSEC分析、化学構造特性を液体13C NMR分析で解析した。各腐植酸は分取HPSEC法により分子サイズ別に細分画(10画分)し安定同位体比質量分析装置(IsoPrime EA)を用いてδ13C、δ15N分析を行った。
黒ボク土における二次遷移の進行は特に腐植酸量を低下させ、これは主に芳香族炭素の消失に伴うことが示された。また、腐植酸の各サイズ別画分のδ13Cはほとんど変化せず、一方、δ15Nは特に中サイズ画分領域で1‰程度増大していることから、これらの量・質的変化は主に既存の腐植酸を基質とした微生物分解・合成プロセスを経て生じた結果であることが推察された。