| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-314

泥炭採掘跡地におけるリター分解

*竹内史子,大瀧みちる,露崎史朗(北大・環境)

泥炭湿原はリター分解速度が遅く、土壌有機物蓄積量が多いため、炭素シンクとなっている。リター分解には主に微生物分解や物理的破砕、光分解が関与するため、温度や養分・水・光などの環境要因に制約されている。しかし、大規模な撹乱を受けることで植生が失われると、その回復にともないリターの供給や分解は変化すると考えられる。そこで、本研究は大規模な泥炭採掘が行われたサロベツ湿原泥炭採掘跡地において、植生変化にともないリター分解速度がどのように変化するかを示し、その変化の主な要因を明らかにすることを目的とした。

泥炭採掘跡地の裸地、ミカヅキグサ優占地、ヌマガヤ優占地に調査サイト設け、各サイトにミカヅキグサ、ヌマガヤのリターバックを設置した。そして、経時変化によるリター分解率とリター成分の測定(C, N, P,δ13C,δ15N)、環境要因(地温、照度、土壌含水率)の測定を行った。

リター分解速度は裸地で遅く、ミカヅキグサ・ヌマガヤサイトでは差がなく2年間で30%程度の分解が認められた。したがって、リター分解速度はリターの種差よりもむしろ周囲の環境(特に植被の有無)により規定されており、光分解の影響は小さいと考えられた。積雪期から融雪期における物理的破砕による消失はいずれのサイトでも10%以下であった。リター成分の変化はミカヅキグサ・ヌマガヤサイトで大きく異なっていた。すなわち、リター分解率とδ15Nにはミカヅキグサリターでは正の傾向が見られ、ヌマガヤリターでは負の傾向が見られた。しかし、ミカヅキグサ・ヌマガヤサイトではともに分解率とNおよびP含有率には正の相関が認められ、ヌマガヤサイトでより高い相関が認められた。以上のことから植生の変化にともない、微生物分解がより重要になることが示された。さらに、二種のリター分解速度は大きく変わらないが、微生物分解機構は異なることが示唆された。


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