| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-316
土壌には、大量の炭素が有機物として蓄積し、CO2増加に伴う温暖化が地球的規模での問題となっている現在、土壌有機物の動態・貯留メカニズムは解明すべき重要な課題となっている。また、有機物動態は土壌有機物中の炭素(C)だけでなく、窒素(N)やリン(P)と密接な関連を持ち、微生物による分解や、物理化学的な作用によって吸着・蓄積するなど複雑なメカニズムを持つ。土壌有機物は、物理・化学・生物的に性質の異なる様々な有機物の集合体である。そこで、本研究では、土壌の粒径サイズに着目した。土壌を粒径サイズによって分画し、各画分のC・N・P分解特性を明らかにすることで、土壌有機物の分解・貯留メカニズムについて新たな知見を得ることを目的とする。
本研究では、ボルネオ島(マレーシア・サバ州)低地熱帯原生林土壌を用いた。風化の進んだ熱帯土壌で、P濃度が低く、Pが有機物の動態に強く影響を与えると推察される。粒径画分によって、微粒状有機物(>63μm)、砂(>63μm)、シルト(63−2μm)、粘土(2−0.1μm)に画分し、微生物バイオマス、形態別P濃度、1ヶ月培養の土壌呼吸速度、純N無機化速度を測定した。
土壌呼吸速度は、砂画分と比較して、シルトが約10倍、粘土は約20倍、微粒状有機物は約100倍高かった。微生物バイオマスも同様の傾向を示した。一方、純N無機化量は、粘土画分が最も高く、微粒状有機物ではNの有機化が進んでいた。発表ではさらに、形態別Pや全C・N・P量を加え、風化の進んだ熱帯土壌において、それぞれの画分のC・N・P分解特性と貯留メカニズムを考察する。