| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-319
スナガニ類は干潟の代表的な堆積物食者であり、活発に堆積物中の有機物を摂食するため、干潟の物質循環に大きく影響している可能性が考えられる。夏季の調査ではスナガニ類の摂食活動によって大量の堆積物が移動し、堆積物中のC、Nも半分程度濾しとられていることが分かった(第56回日本生態学会発表)。しかし、冬季はスナガニ類の活動が低下するため、彼らの摂食活動の影響も変化することが予想される。本研究では広島県黒瀬川河口干潟を調査地として、スナガニ類の摂食活動について夏季と同様に調査を行い、その影響について比較を行った。
まず、調査地で多く見られるスナガニ類の一種、チゴガニ(Ilyoplax pussila)の摂食量を調べた。摂食量の指標として、摂食時に排出される泥ダンゴ(food pellets)の乾重量巣穴直径との関係を調べたところ、夏季と同様に冬季も正の相関が見られた。この関係式と調査地の巣穴直径と数から面積あたりの摂食量を推定した。1m2あたりのpellets量を推定すると、冬季では面積当たり約114gのfood pelletsが排出されており、夏季の推定量と比べ半分程度減少していた。
次に、摂食内容を明らかにするためにCN分析を行った。冬季においては、夏季と同様に摂食活動によって堆積物中のC、Nが約20%-50%程度濾しとられていることが明らかになった。以上の結果より面積あたりのC、Nの濾し取り量を推定したところ、一回の干出で1 m2あたりCが約170mg、Nで約18mgとなった。この値は夏季の約1/3程度で、スナガニ類の活動が低下する冬季であっても彼らの摂食活動が干潟の物質循環に大きく影響している可能性が示唆された。