| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-328

キシャヤスデとミドリババヤスデの食性の違いと糞の化学性への影響

*岩島範子(島根大・生資), 金子信博(横国大・環境情報), 若月利之(近大・農), 増永二之(島根大・生資)

ヤスデ等の大型土壌動物の移動に伴う物質の移動や、土壌やリター食に伴う物質変化等の活動は生態系に影響を与える。今回対象とした2種のヤスデは比較的大型で数年毎に一時的ではあるが高密度で地表に出現するため、土壌の化学的特性に与える影響はより大きいと思われる。本研究ではヤスデが何を食べ、どんな糞をしているかに焦点をあて、同じババヤスデ属2種の糞の化学的性質を調べた。

2008年秋に八ヶ岳にて採取したキシャヤスデの成虫と三瓶山にて採取したミドリババヤスデの成虫を用いた。八ヶ岳の黒ボク土、カラマツ林リターを用いて、キシャヤスデ(A)を、三瓶山の黒ボク土とコナラが優占する落葉広葉樹林リターを用いて、キシャヤスデ(B)、ミドリババヤスデ(C)、ミドリババヤスデ(高密度)(D)の4系で飼育し、採取した糞の化学分析を行った。土壌水分は最大容水量の60%、気温20度、暗条件で1週間飼育後、糞を採取し、リターを除去後、2mmの篩を通して糞試料とした。

全炭素、全窒素、強熱減量、土壌呼吸の測定によって、(1)キシャヤスデはミドリババヤスデより土壌を多く摂食、(2)ミドリババヤスデにおいて高密度になると土壌食割合が増加、(3)二酸化炭素発生量はリター食割合が多いほど大きいことが示唆された。ヤスデの種類、密度によって土壌とリターの混食割合が変化し、有機物分解速度に影響を与えることが考えられた。

さらに、培養による窒素の無機化特性を調べた結果、土壌よりもヤスデの糞の方が無機化量が多い傾向にあった。またミドリババヤスデの糞は4週目で無機化量が急激に増加し、キシャヤスデの糞と土壌は4週目以降で無機化量が増加した。ヤスデの違いによる無機化特性の違いが見られた。


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