| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-329

林分発達初期段階の天然更新林とスギ人工林における6年間の土壌呼吸速度の比較

*志津庸子, 八代裕一郎, 曽出信宏(岐阜大学), 上田聡嗣, 小泉博(早稲田大学), 大塚俊之(岐阜大学)

伐採、植林などの森林管理は森林構造や環境要因を変化させ、結果として土壌呼吸も変化させる。土壌呼吸は伐採後約10年で急速に増加すると報告されている。この変化には林分の発達や環境要因(温度や水分)の影響が考えられる。しかし、伐採後の発達初期における経年的な調査は少なく、これらの要因と土壌呼吸との関係はよくわかっていない。そこで本研究は皆伐後の発達初期段階の管理の異なる林分において、経年的な調査で土壌呼吸動態を明らかにすることを目的とした。

調査地は岐阜県高山市郊外に位置する。調査地一帯は1998年に皆伐された。皆伐地の半分は2001年にスギが植林され、残りは落葉広葉樹が天然更新した。スギ人工林(CP)と天然更新林(NF)において、土壌呼吸速度を毎月16地点ずつ測定した(2004-2009年)。同時に地温と土壌水分を測定した。

2008年の林分概況は幹数密度がCPで82本200m-2、NFで966、群落高がそれぞれ3.4、5.4mであった。土壌呼吸速度は調査期間を通してCPよりNFが高かった。各林分で年間土壌呼吸量は年変動し、CPで2005年が低く(6.5tC ha -1 yr -1)、2009年が高かった (7.5)。一方、NFでは2009年が低く(9.2)、2008年が高かった(11.0)。地温や土壌水分はNFで低くかった。両林分間の地温差は年経過とともに小さくなり、土壌水分差は大きくなった。バイオマス、細根量はNFで多く、両林分とも年々大きく増加した。

幹数密度や群落高からNFの林分がより発達しているとわかる。その結果、細根量を含むバイオマスがNFで多かった。土壌呼吸はCPよりNFが高く、その原因は地温や水分より細根量が影響している可能性が示唆された。しかし、土壌呼吸とバイオマスの年変動に関係は見られなかった。


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