| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P3-330
陸上生態系の基盤である土壌は、複雑な生物間相互作用により、その機能を維持している。その中でもミミズは有機物の動態や微生物の活動に直接、間接的に影響を与えており、土壌の栄養塩挙動に大きく影響を与えている。特に、ミミズの摂食活動に起因する窒素の放出および糞における微生物の無機化促進機能が考えられる。しかしながら、日本のミミズと窒素動態の研究はほとんどなく、また飼育例自体も少ない。そこで、日本で比較的普通に見られる一年生種のヒトツモンミミズ(Metaphire hilgendorfi)とアオキミミズ(Metaphire soulensis)を用い、飼育条件、特に土壌基質の検討を行うと共に、ミミズ種と土壌の違いによる窒素無機化速度の変化を調べ、日本産ミミズの窒素無機化機能を検討した。北海道大学北方生物圏フィールド科学センター苫小牧研究林の森林土壌とOECD人工土壌を5段階に混合し、圃場容水量の60%に水分調整した後、ミミズを投入し、16時間20℃、8時間18℃の周期の条件で2週間飼育した。その後ミミズの重量および土壌の無機態窒素濃度を測定した。ヒトツモンミミズは25-75%の混合土壌で成長し、森林土壌のみ(0%)より改善効果がみられた。それに対し、アオキミミズは全ての条件で重量が減少し、0%と100%では死亡個体も確認された。ミミズの飼育には人工土壌のみでは不適であり、野外土壌を25%程度混ぜることで、ヒトツモンミミズの飼育は可能であると考えた。また、土壌の混合割合は、土壌のC/N比を大きく変え、混合比75%と100%ではそれぞれ29、54を示した。C/N比が30まで大きくなると窒素無機化速度が直線的に減少し、50ではほとんど無機化が起きなかった。これらからも、75%の混合比がヒトツモンミミズの飼育に適していると考えた。