| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S02-4

生物多様性観測ネットワークと総合評価の今後の課題

矢原徹一(九州大学)

生物多様性条約第10回締約国会議(CBD COP10)では、ポスト2010年目標の設定を行う。ポスト2010年目標の設定にあたっては、評価指標の設定が必要不可欠である。わが国の生物多様性総合評価は、生物多様性のトレンドを評価する指標開発に寄与することが望まれる。この指標開発に関しては、CBDだけでなく、GEO(地球観測に関する政府間会合)の下に組織された生物多様性観測ネットワーク(GEO BON)も取り組んでいる。GEO BONは、DIVERSITASとNASAが中心となって、2008年に設立された研究者のネットワークである。日本では、GEO BON日本委員会(J-BON)が2009年5月にスタートした。また、環境省事業費によって、アジア太平洋地域生物多様性観測ネットワーク(AP-BON)が7月にスタートした。これらのネットワークでは、既存の生物多様性観測システムをつなぐことで、生物多様性の広域的なトレンドを把握しようとしている。これらの一連の取り組みの中で、以下のような課題が顕在化している。

(1)遺伝子・種・生態系レベルのトレンドをいかに関係づけるか?

(2)生物多様性のトレンドと生態系サービスのトレンドをいかに関係づけるか?

(3)生物多様性のトレンドと人間生活の関係をいかに評価するか?

(4)観測されたトレンドを生物多様性損失を防ぐための行動提起にいかに結びつけるか?

生物多様性の総合評価は、単なるデータの集積にとどまるのではなく、その評価が生物多様性損失を防ぐ市民の行動につながるものであることが望ましい。そして、その行動がさらにデータの集積を促すというフィードバックを作りだすことが、生物多様性を守るうえで重要だろう。


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