| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
シンポジウム S06-4
外来生物による生物群集や景観の改変、および農林業被害に代表される人間社会との軋轢などの生態リスクは各地で深刻な問題となっており、根絶を目指した管理が多くの地域で行われている。しかしながら、外来生物の個体群動態を把握することは容易ではなく、情報不足によって適切なリスク管理が困難であることも多い。
奄美大島においては、1970年代に放獣された外来哺乳類ジャワマングースがアマミノクロウサギなどの固有種を含む在来動物群集に対する脅威となっており、根絶を目指した捕殺作業が2000年度より実施されている。捕獲によってマングースは減少傾向にあることが明らかになっているが、マングースの個体群動態についてはなお不明な点が多く、捕獲戦略の評価と改善に直結する情報は不足している。これまでの捕獲履歴についてはトラップの位置情報などの詳細なデータが蓄積されており、それらをいかに活用するかが課題となっている。
そこで、本研究においては捕獲データとその背後にあるマングースの個体群動態の関係を階層ベイズモデルとして記述し、捕獲率、個体群の自然増加率、時空間で変動する個体数などの直接測定が困難なパラメータを推定するHarvest based modelを構築した。講演においては、ランダム効果による時空間的な不均一性の推定、観測できない生態プロセスの表現、複数のデータソースの統合というこのモデルの特性から、野生動物リスク管理における階層ベイズモデルの有効さについて考察する。その一方で、モデルの良さの評価の難しさなど、階層モデルの適用上の問題点についても議論したい。