| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
シンポジウム S15-2
東南アジア熱帯雨林に生えるフタバガキ科に属する多くの種は、数年に一度、一斉に開花するという特殊な開花様式を見せる。この開花現象は数年おきに起きる不定期な乾燥と相関して起こることが示されているが、詳しい開花機構についてはわかっていない。
近年、実験室におけるモデル植物をもちいた分子遺伝学的研究から、植物の栄養成長相から生殖成長相への相転換(花成)を制御する多くの遺伝子が明らかにされてきた。花成時期の決定は開花時期を決定する重要なタイミングである。これらの花成制御遺伝子は、さまざまな環境シグナルによって制御される複数の絡み合った花成経路を形成している。イネやシロイヌナズナといった系統的に離れた種間の比較研究の結果、異なる環境シグナルを受容し花成にいたる植物種間で多くの花成制御遺伝子が共有されていることがわかっている。
これまで、分子生物学におけるモデル植物あるいはその近縁種以外を用いて遺伝子の発現制御を調べることは困難であった。しかしながら、モデル植物における遺伝子制御ネットワークの理解とともに、次世代シークエンサーなどの技術の発達に伴い、非モデル植物において多くの遺伝子情報を得ることができるようになった他、特定の遺伝子の発現を調べることも比較的容易になってきた。この発表では、特殊な開花様式を見せるフタバガキ科植物に対して、これらの遺伝子情報を応用し、乾燥などの環境シグナルと開花機構の関係を理解することの可能性と、その問題点について議論したい。