| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S16-4

農林水産省・環境省連携 「田んぼの生きもの調査」

*坂根 勇,守山拓弥(農村環境整備センター)

農林水産省と環境省が連携して平成13年度から継続して実施してきている「田んぼの生きもの調査」について概説する。この調査は、全国的な広がりで、生きものの専門家グループの指導・助言を受けて一定の調査方法・取りまとめ方法を定め、採捕した生きもの(魚、カエル、水生昆虫)の同定を写真を活用して専門家により行い、自然環境保全基礎調査(「緑の国勢調査」)とも情報交換する、等の特徴を有している。

水田や水路、ため池など、多様な環境がネットワークを形成している農村地域は、生きものにとって重要な生息・生育の場となっている。このような農村地域でほ場整備やかんがい排水などの土地改良事業を進めている農林水産省は、「生きものなどの環境に配慮しながら事業を進めるため、地域の生きものや複雑な生態系に関する情報を収集、蓄積することが必要である」との目的意識に基づいてこの調査を実施している。

具体の調査の実施は、国の農業農村整備事業関係機関をはじめ、都道府県や市町村といった行政機関だけでなく、土地改良区や地元農家、さらには小学校や地域住民、農地・水・環境保全向上対策の活動組織の参加も得ていて、事業のためのみならず、農村地域の多様な生きものについての理解の促進、さらには自然と共生する地域作りを目指している。

本年度実施分も含めて、9カ年分の調査結果が蓄積された現在、これらデータは行政や研究機関だけでなく、国民全体の財産であるとの考えにもとづいて、その有効活用について検討がなされているところであり、検討の方向性についても報告する。


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