| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S19-2

景観スケールにおける樹木の絶滅確率予測

*石田敏(東北大),中静透(東北大)

最近数十年間には、薪炭林として利用されてきた二次林が、針葉樹人工林へ転換されるなど,大きな変化がおこり、森林の生物多様性にも大きな影響を与えた。したがって,ある地域における希少種の保全を考えるときに、どのような土地利用、管理シナリオが特定の種に影響を与えるかを考慮する必要がある。しかし景観全体を捉えるためには多くのデータが必要であり、またすべての種の動態を求めることは難しい。そこで土地利用の変化と、群集内での種組成変化をマトリクスで表し、両者を組み合わせて種組成の変化を予測した。さらに絶滅確率の予測も行い、管理シナリオごとの違いから考えられる種ごとの応答性の違いを考察した。小川保護林周辺における土地利用を、原生林、二次林、スギ林、草地に大別して、それぞれの土地利用が変化を過去約50年にわたりマトリックスで示した。それぞれの土地利用では、放置すると林冠木から下層木への遷移がマトリックスで示され、二次林伐採では伐採前後の種組成比から出した伐採による変化マトリクスが求められる。地域全体の種組成は最近の土地利用変化に基づいて世代ごとに決定した。樹木種ごとの絶滅確率は、調査データのばらつきを持ち、最終的な種組成が様々な値を取る。この試行を繰り返して、景観内に1本の林冠木がない、絶滅した場合がどのくらいあるかを計算した。以上の景観全体の種組成、種ごとの絶滅確率を指標に、管理シナリオである里山の増減、保護林設定の有無による土地利用の影響を考察した。


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