| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
企画集会 T03-1
海藻の多くは、半数体世代(配偶体)と2倍体世代(胞子体)が独立した藻体をもち、それらが減数分裂と接合で世代交代をする。さらに、その世代交代のパターンは大きく分けると、片方の世代が大きな藻体になりもう片方の世代が微少になる異形世代交代と、両方の世代がほとんど同じ形と大きさになる同形世代交代の二つに分類でき、それらは緑藻、褐藻、紅藻の各グループに見られる。
我々は、これらを季節変化する環境への適応の結果として理解する数理的研究を行った。そこでは生存率が季節変化する環境を設定し、大きな藻体をもつ生活形は捕食や物理的撹乱を受けやすいため季節性が強く、微小な生活形は成長をしないが安定した生存が見込めると仮定し、各世代の最適世代交代(成熟)スケジュールと、二種の競争状態における優占性について調べた。
その結果、異形世代交代をする種は、大きな藻体をもつ世代が死亡率の低い季節に生育して、小型の世代が死亡率の高い季節に生育するようなスケジュールでの世代交代が最適であった。そして、同形世代交代をする種は、全ての世代が一定の成熟サイズに達した時点で成熟するようなスケジュールでの世代交代が最適であった。
また、異形世代交代をする種は同形世代交代をする種と比較すると、より季節変化が激しい環境で優占することが予想された。そして、死亡率が極端に高い環境や極端に低い環境では、異形世代交代をする種が優占し、その中間の環境に同形世代交代をする種が優占することが予想された。
本発表では、理論的に予測される世代交代様式の優位性と、現実の潮間帯に見られる海藻の地理的な分布パターンの関係などについても発表することを予定している。