| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
企画集会 T20-1
水田は我が国の低地面積の45%を占め,モンスーンアジアを特徴づける河川氾濫原や湿地の代償として生態学的に重要である.水田地帯にはタガメやダルマガエルなど多くの絶滅危惧種が生息する一方で,山地の自然と異なり,自然保護区として守られることはない.生活や生産の場でもある水田地帯での生物多様性を保全するためには,農家や市民が水田の生物多様性の価値を認識して,利用しながら保全しなければならない.トキのような有名な生物がいなくとも、地域ごとに重要な生物や生態系が存在し、安全で生物多様性に配慮した農業によって生き物ブランド,魚など副産物,天敵増加といった生態系サービス(自然の恵み)が得られる。そうした生態系サービスを効果的に得られる仕組み作りが生物多様性保全の取り組みに不可欠である。農業地域での生物多様性の保全はアジアのみならずヨーロッパでも重要な課題とされ,2010年以後の生物多様性保全目標の設定とその達成の道筋で中心的なテーマのひとつとなる.特に我が国の伝統的な循環型社会である里地里山における持続的な生活を支えてきた.研究は,自然科学と社会科学両方から進めているが,今回は,水田地帯の生物多様性そのものの概観から,ランドスケープと農法が及ぼす影響を,分類群ごとに明らかにし,異なる群集構造を生み出すプロセスに迫る.