| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) A1-04
物質循環を扱う陸域生態系モデルの開発によって純一次生産量(NPP)や生態系純生産(NEP)などの有機体炭素の蓄積量や気候変動に伴うそれらの変化予測が可能になってきた。そして純一次生産の人間による専用率(HANPP)は物質循環のみならず生物多様性や生態系サービスの供給量に影響することから、生態系生産と人間の生産活動を統合した解析が求められている。これまでに全球レベルではHANPPの地理的分布に大きな相違があることが報告されており、その空間的不均一は主に農業など人間利用による生態系生産分配の地理的相違や人為的な有機炭素移動に起因する。
本研究では地域スケールにおけるHANPPの地理的分布を明らかにすることを目的に、北海道内の221市区町村を対象として解析を行った。解析には各市区町村の社会・経済指標と陸域生態系モデルによって推定された純一次生産力と生態系炭素蓄積量データベースを同行政区毎についてまとめた指標を用いた。
北海道市区町村単位の農業生産は可住地域面積比率と比例しており、NPPによって規制されている傾向がみられた。また森林地域は農地利用をされていない流域上流部に分布し高いNPPを有していることから、林業生産のみならず可住地域における土地利用の基盤を提供していることが推測された。北海道はその気候条件から比較的低いNPPによって特徴付けられるが、短期間の土地利用履歴から高い生産潜在力を保持している。本研究では生態系生産に対応した社会システムを概観するために、空間詳細グリッドデータの生態系情報を行政単位の社会統計情報と対比する手法が有効であることを示し、今後の課題について議論する。