| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) A2-02

三方湖(福井県)におけるヒシの分布に影響する要因

*西廣淳(東大・農学生命), 加藤義和, 吉田丈人(東大・総合文化), 鷲谷いづみ(東大・農学生命)

ラムサール条約登録湿地である三方湖では、近年、一年生の浮葉植物ヒシが急増している。特に2008年以降は、三方湖の湖面のうち、汽水湖である水月湖と接続している湖の下流部および流入河川の河口部にあたる上流部を除く、ほぼ全ての範囲を埋め尽くすように繁茂するようになり、地域ではヒシの駆除管理が開始された。本研究では、ヒシの繁茂をもたらす要因を解明し適切な湖沼管理方策を提案することを目指した研究の一環として、三方湖内のヒシの空間分布に影響する要因を検討した。

三方湖内に10点の調査地を設け、それぞれにおいて船上から鋤簾を用いて一定面積の底質を掻き取ることよりヒシ種子を採集し、種子密度と発芽動態を調べた。その結果、前年にヒシが繁茂していた場所では、発芽期前の3月には31-63個/m2の種子が底質中から検出されたが、ヒシの繁茂が認められなかった湖の上流部および下流部では種子はほとんど検出されなかった。

近年におけるヒシの繁茂が認められない下流部と上流部、および高密度な繁茂が認められる湖心部の湖底に、2010年3月に休眠解除処理をした種子をメッシュバッグに入れて設置し(45種子/地点)、発芽終了期にあたる6月上旬に発芽/休眠/死亡種子の割合を調べた。その結果、頻繁に汽水が侵入する下流部では設置した種子の80%が発芽後に死亡していた。一方、上流部では76%が発芽・展葉し、これは湖心における発芽率(51%)よりもむしろ高かった。

ヒシの繁茂を抑制している要因は三方湖内の地点によって異なり、上流部付近では種子供給の不足が、下流部付近では、種子供給の制限に加え、汽水の流入による実生の死亡が主要な要因となっていることが示唆された。


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