| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) B2-01
コウモリ類は、種数や分布域の大きさ、都市域から原生的環境まで様々な環境を利用すること、長寿命であり生態的機能も高いことなどから、各種生態系における指標生物として適していると考えられる。しかし、手法的制約や研究者および認識の不足などにより、これまで国内ではモニタリングの対象として扱われることは全くなかった。一方で海外では、近年の技術発達に伴い手法的制約がなくなったことで、指標生物としての注目度が急速に増し、長期モニタリングが様々な国で開始されている。
このような状況の中、ロンドン動物協会と英国コウモリ保護団体が主体となって、地球規模でのコウモリ類モニタリングプロジェクト(Indicator Bats Program以下iBats)が2006年から開始された。このプロジェクトでは、より多くの地域で多くの市民および研究者がモニタリングに参加でき,結果を効率よく得ることができるように、安価かつ容易な方法(超音波マイク・録音機・GPSを自動車に設置して行うラインセンサス)を考案・採用している。各調査者が行ったモニタリングのデータはインターネットを通じてサーバにアップロードされ,結果はいつでも閲覧できる状態になる。2011年からは,専用アプリをダウンロードしたスマートフォンを利用したモニタリングも可能になる。また、本プロジェクトでは世界中で同じモニタリングプロトコルを採用することによる広範囲での比較も目標にしており、2010年の時点で15カ国が参画していている。
日本でも、2010年より「コウモリの会」が主体となってiBats-Japanを立ち上げ、プロジェクトに参画することが決まり、第1回のワークショップならびに試験モニタリングを開催した。本発表では、プロジェクトの概要ならびに今後の展望および課題について紹介する。