| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) B2-04
2007年の「改訂版 汽水・淡水魚類レッドリスト」では、実に144種が絶滅危惧種として選定されており、人為的な影響による個体数や種多様性の減少が著しい。種の絶滅や個体数の減少と生態的特性の関係を明らかにすることができれば、減少要因の解明や今後影響を受ける種の予測など生物多様性の保全に貢献できると考えられる。
本研究では、ラムサール条約登録湿地である福井県三方湖流域に生息する在来純淡水魚類を対象とし、出現頻度が著しく減少している種群と結びつきの強い生態学的特性を明らかすることを目的とした。まず、既存の長期モニタリングデータの網羅的な収集と、2006~2009年にかけて広域魚類調査を実施し、1984年以前、1990~1996年、1997~2005年、2006~2009年にわたる魚類相の変化を把握した。次に、全ての出現魚種(22種)について、6つの生態学的特性(最大全長・産卵基質への依存性・餌資源の広さ・生活型・産卵数・親の卵保護の有無)を調べた。系統的自己相関を考慮するために、科をランダム効果としたGLMMを用いて解析した。
長期の魚類相変化を調べたところ、5種について出現頻度の減少が認められた。また総当たりモデル選択の結果、産卵基質への依存性を説明変数とするモデルがベストモデルとして選択され、砂礫や二枚貝など特殊な産卵基質を必要とする魚種が減少していることが明らかになった。以上のことから、産卵基質や産卵場所の量や質の変化が、三方湖流域の淡水魚類の種多様性に大きな影響を及ぼしている可能性が示唆された。