| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) B2-13
生物多様性を高めるためには、生物の継続的な調査が不可欠である。しかし、従来の企業緑地においては緑地の「量」のみが重要視されていたため、設計された緑地が動植物の生息地としての機能を果たしているかどうかについての継続的な検討はなされていなかった。また、生物調査が行われていたとしても、外部の専門家に依頼し、結果だけを受け取る方法が主流であり、施設管理担当者をはじめ、従業員の意識の向上にはつながらなかった。そこで、生物が専門でない従業員でも生物に興味を持ち生物多様性がモニタリングできる手法を開発した。
モニタリングの方法は、対象となる企業保有地で生物を観察し、シートに記載してある大まかな分類、大きさ、シルエットなどから判断し、チェックを付けるという簡便なものである。モニタリングの対象生物は、山形大学の横山教授の監修のもと、生物多様性の指標となり、素人でも区別が付きやすい生物種を選定した。シートでは、各生物の生息特性と指標となる環境に関する説明を付加し、モニタリングを重ねるうちに生物多様性と環境に関する理解が深まるように工夫した。
各企業の保有地でこのシートを使ってモニタリングすることにより、順応的な管理に反映し効果的に生物多様性を高めることが期待できる。さらに、今後日本各地の企業にこの活動が普及すれば、生物多様性観測拠点の創出にも大きな効果があると考えられる。