| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) C1-04

河川改修と土地被覆の変遷ー河畔林の減少と増加ー

*久保まゆみ,中村太士(北海道大学・農)

河畔林は河川攪乱によって形成される多様な立地環境の上に成立し、その種組成や構造は高い多様性を持つ。しかし、都市が発達した下流域では治水対策として河道の直線化や水制工などの河川構造物が造成され、河川環境は大きく改変されてきた。本研究では網状の礫質河川である十勝川水系札内川を対象とし、過去50年の航空写真を用いて築堤による河道の直線化や水制工・護岸等の河川構造物が河畔林に与えた影響を明らかにした。また、現在の植生とその成立要因を把握するため現地植生調査を行った。

1950~60年代における築堤の造成により河道と河畔林の面積が減少し、河川攪乱を受ける範囲が大きく減少した。その後、水制工や低水護岸により流路変動が制限され、低水路が固定された。また、1980年代まで続いた土砂採取によって河床が低下し、低水路の安定化がより促進したと考えられる。築堤よって河畔林面積は大きく減少したが、低水路の安定化により高水敷きの面積が大きくなり、そこに河畔林が成立したため1980年代以降、河畔林面積は増加した。現在は、頻繁に攪乱を受ける低水路とほとんど攪乱を受けることのない高水敷きに二極分化している。水制工により土壌が堆積した場所ではオノエヤナギが優占していた。十勝地方の礫床河川に優占するケショウヤナギは乾燥耐性が高く、礫質の土壌を好むため、水制工周辺に堆積した水分含有率の高いシルト状の土壌では生育が難しく、生育条件が適合したオノエヤナギが優占したものと考えられる。

札内川下流域の河畔林は戦後の高度成長期の農地・住宅開発などの土地利用によって減少した。その後、土砂採掘や水制工による低水路の安定化により高水敷きや水制工周辺に河畔林が増加したものの、本来の網状礫床河川に成立する河畔林と種組成は異なっていた。


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