| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) C1-11

地図情報を用いた植生面積推定法の検討ー中国地方の半自然草地抽出の事例ー

*太田陽子(緑と水の連絡会議),井上雅仁(島根県立三瓶自然館),堤 道生,高橋佳孝(近中四農研)

過去の植生を復元しようとした場合、時系列的な空中写真や地形図の利用が有効である。GISやデジタルデータの普及により判読作業は格段に容易になったが、衛星画像を利用する場合と違い、空中写真の判読などの作業は手作業による部分が多いため、現実的に作業可能な範囲は限られる。また、一般に入手可能な空中写真のうち最も古いものは昭和初期のものしかなく、それ以前は地形図を判読することで植生を把握する場合が多い。そこで、地形図の凡例から、より広範囲に時系列的な植生の分布を把握する方法を、中国地方の半自然草地を事例として検討した。

中国地方でも広い草原が残る山口県秋吉台地域と島根県三瓶地域において、国土地理院発行の5万分の1地形図から、明治、昭和初期、平成の各時期における地形図凡例をGISのポイントデータとして抽出した。そのポイントを中心に、サイズを変えたバッファを発生させ、「荒地」および「草地」のバッファ全域を草地面積とした場合と、「荒地」および「草地」のバッファがそれ以外の凡例のバッファと重なる部分を凡例の数で等分した場合の面積を求めた。さらに、地形図を異なるスケールのメッシュで等分し、「荒地」および「草地」の凡例が含まれるメッシュの合計面積を求めた。

これら3種の推定面積と空中写真の判読や地形図の境界線から求めたポリゴンの面積との一致状況を検討した結果、バッファを使用するには半径150mで、「荒地」および「草地」以外のバッファと重なる部分を等分した場合、メッシュを使用するには250mメッシュを使用した場合に、ポリゴンから求めた面積との整合性が高いと判断できた。さらに、様々なデータとの重ね合わせなどを考えると、バッファよりもメッシュを用いて面積を推定する方がより有用であると思われた。


日本生態学会