| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) C1-12
2005年、長年にわたって文化財行政を統括してきた文化庁は、文化財保護法によって規定される文化財に「文化的景観」を加えるべく同保護法を改定した。そして、その物件(文化的景観)を「重要文化的景観」と定義することにした。したがって、文化財専門委員会の中に独立した一部会として「文化的景観委員会」が設置されることになった。以後、同委員会では毎年4月と10月の定例の調査会において、全国からあらかじめ調査された指定物件候補である文化的景観について、それを国の「重要文化的景観」に指定するか否かを審議してきた。演者は2005年の同委員会設立以来、急病による欠席1回を除いて2010年10月までの間12回に全日にわたり出席し、審議に関わった。委員会では唯一の生態学研究者であり、また景観生態学を専攻する者として、各物件に生態学的価値や生態系の評価を下してきた。2010年10月現在、21件の重要文化的景観が指定されている。本講演では、これら21件の重要文化的景観における景観要素に関して、その生態系評価を試みた結果を報告し、今後の指定に関して生態学的視点の重要性を喚起するものである。なお演者の検討の基準は、単体としての生態系の充実度、景観を構成する要素間の相互作用、生物多様性、生業による維持の可能性、伝統を保守する新たな試みなどであった。対象物件(略称):1)沙流川流域、2)遠野荒川高原牧場、3)一関本寺、4)金沢市、5)姥捨、6)近江八幡市、7-8)高島市、9)宇治市、10)樫原(上勝町)、11)遊子水荷浦(宇和島市)、12-16)四万十川流域、17)蕨野(唐津市)、18)平戸島、19)通潤用水と白糸台地(山都町)、20)小鹿田焼の里(日田市)、21)田染荘小崎(豊後高田市)。