| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) C2-02

八ヶ岳東麓における森林構造の標高による変化

*清野達之(筑波大・生命環境),山口翔太(筑波大・生物資源)

八ヶ岳の東麓にひろがる針広混交林から亜高山針葉樹林までの標高傾度にそった林分構造と分布パターンの変化を定量的に解析することを目的に調査を行なった.調査は八ヶ岳連峰南部の 東斜面に位置する東麓の標高1350mから2400mにかけて,300から450mおきに合計7箇所で0.25 ha (一部0.24ha) のプロットを設置した.各プロットにおいて,胸高直径5cm以上の全ての個体について樹種を特定し,胸高周囲長,プロット内での位置を記録し,胸高直径 5cm以上の個体の樹高を測定した.胸高直径階分布と空間分布の解析から主要な樹種の更新パターンを推測した.

一般に高緯度や高標高の森林では,構成する樹木のサイズが小さくなっていくことが報告されている.本研究の結果では,樹木サイズは標高の上昇に伴った減少 は顕著にみられなかった.これは成長特性の異なる種に入れ替わることにより,必ずしも標高の上昇に伴って樹木のサイズは小さくはならないことを示唆している.1350mではウラジロモミと落葉広葉樹との針広混交林であったが,1800mからは常緑針葉樹林に変化しており,優占種は標高に応じてシラビ ソからオオシラビソへと変化した.標高間で優占種が異なった背景として,それぞれの標高での攪乱体制や更新過程の違いがあげられる.1350mで全体の6 割強で優占するウラジロモミの直径階分布は,不連続な直径階分布を示した.1800mと 2100mではダケカンバが集中分布を示し,比較的大きな攪乱が生じた後に定着したことが推測された.2400mではプロット全体の直径階分布は逆J字型を示したが,トウヒとダケカンバは一山型分布を示した.

以上の結果から,サイズの構造の変化と更新パターンの違いによって優占する種が異なり,標高に沿った種の入れ替えの重要性が示唆された.


日本生態学会