| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) D2-02
森林の落葉分解では、白色腐朽菌をはじめとする菌類による難分解成分リグニンの分解がよく知られているが、この分解が窒素動態にどのような影響を及ぼすかについては不明な点が多い。そこで本研究では、リグニン分解と窒素動態にどのような関連があるかについて明らかにすることを目的として、落葉の一部がリグニン分解菌などにより漂白されている落葉サンプルを用い、漂白部分と非漂白部分の遊離アミノ酸、加水分解性アミノ酸濃度、抽出可能な溶存有機態窒素濃度、窒素無機化速度を比較した。その結果、遊離アミノ酸、加水分解性アミノ酸とも、濃度(mM/g)は非漂白部に比べ漂白部で高かった。また、アミノ酸組成(mol%)は、加水分解性アミノ酸ではいくつかのアミノ酸で漂白部と非漂白部とでややパーセンテージが1〜2%ほど異なっていたものの、概ね漂白部と非漂白部とで非常に似た組成を示した。また、窒素無機化速度は漂白部で明らかに高い値を示し、抽出可能な溶存有機態窒素の濃度も漂白部で高かった。これらの結果から、同じ落葉でも漂白部分では、リグニンをはじめとする落葉分解が進むことで遊離アミノ酸および加水分解性アミノ酸をはじめとする有機態窒素濃度が高くなっており、これが窒素無機化を促進していることが示唆された。それゆえ、白色腐朽菌によるリグニン分解は、アミノ酸態窒素をはじめとする有機態窒素や無機態窒素の動態に影響を及ぼすことが明らかとなった。