| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E2-01

潜るか潜らないか、カモたちの選択 -北方で越冬する陸ガモの採食行動-

岡 奈理子

陸ガモ類の採食方法は水面での、ろ過、ついばみ、倒立採食であり、潜水して採食する潜水ガモ類と大別されてきた。寒冷地は厳冬期になると湖沼や河川、湿地などの好適な生息地のほとんどが、冠雪や結氷によって採食機会を損なうにも関わらず、かなりの陸ガモ類が越冬してきたが、採食生態にあまり関心が払われてこなかった。

寒冷地に越冬する代表種の一つ、マガモAnas platyrhynchosはオホーツク沿岸の汽水河川の開氷域で厳冬期を通じて生息し、主に二枚貝などの底生動物を潜水採食していた。彼らの捕食圧は秋季から初冬に優占した潜水ガモ類が忌避した大きめの貝サイズの採食で、エネルギー要求量をみたしていると考えられた(岡 2010)。マガモで明らかになった陸ガモ類の潜水採食による越冬生態の新知見は、従来の採食方法によるカモ類の区分方法を見直す必要性を示唆している。

引き続き筆者は、寒冷地のヒドリガモAnas penelopeの厳冬期の採食知見を得たので発表する。ヒドリガモは、寒冷地で厳冬期にも生息する陸ガモ類である。北海道の厳冬期の生息数はマガモの1割~2割程度とみられる。かれらは、それぞれ、ほぼ同数の群れを形成したマガモ、キンクロハジロとともに、道央の千歳川で活発に潜水し、ヒドリガモは川底に群生する底生植物を採食していた。ヒドリガモの1バウトあたりの潜水時間は5秒程度であった。水生植物のカロリー含有率は一般的に低いため、相当量の採食が必要だが、この水域一帯の底生植物資源量は多く、厳冬期を通じて生息し続けたとしても、エネルギー要求量を満たすと思われた。

引用文献: 岡 奈理子(2010)オホーツク海潟湖で越冬するマガモの採食潜水行動.日本鳥学会誌 59:161 – 167.


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