| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) E2-04

アカオオハシモズにおける手伝い行動の個体差

*江口和洋(九大院・理・生物),浅井芝樹(山階鳥類研究所),山岸 哲(新潟大・朱鷺・自然再生学研究センター)

マダガスカル固有種のアカオオハシモズSchetba rufaは、つがいに1個体以上のオスがヘルパーとして付く協同繁殖を行う。1歳オスは性的未成熟で出自なわばりに留まりヘルパーとなるが、性的に成熟する2歳以降もヘルパーでいる個体も多い(Yamagishi et al. 2002)。ヘルパーの貢献は大きいが、繁殖の向上をもたらさない(Eguchi et al. 2002)。本種の手伝い行動の個体差(特に,ヘルパーの年齢と繁殖個体との血縁度)を調べ、手伝いの適応的意義を考察した。

調査は1994年〜1999年の繁殖期に,マダガスカル西部のアンピジュルア研究林で行った。手伝い行動は巣への給餌訪問頻度で評価した。ヘルパーと繁殖個体間の血縁は、家系データとマイクロサテライト解析に基づく。

育雛前期(ふ化後7日まで)にはヘルパーは1歳と2歳以上ともに繁殖個体より貢献は低く、1歳個体は2歳以上のヘルパーより低かった。しかし、育雛後期(ふ化後8日以降)にはヘルパーの貢献は増大し、一方、繁殖メスの貢献は低下した。1歳ヘルパーの給餌頻度と餌サイズは育雛後期には2歳以上と同じレベルに達した。1歳ヘルパーでは、繁殖メスの息子は非血縁個体よりも貢献は高かったが、2歳以上のヘルパーの貢献には血縁度は影響しなかった。1歳個体の給餌頻度は自身の翌年までの生存率には影響しなかった。

1歳ヘルパーでは、ヘルパー自身が手伝い行動による直接的な適応度利益を得ることはなく、母親の労働を軽減することで間接的な利益を得ていることが示唆された。2歳以上のヘルパーでは、非血縁の繁殖メスへの宣伝、または、つがい外交尾により得た子への給餌により、直接的利益を得ていることが示唆された。


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