| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) F1-06
環境変化に対する生物群集の反応を,機能形質の分布(形質の平均値など)の変化として解析する理論的枠組みを研究した。群集の動態が多種系のロトカ・ボルテラモデルに従い,種間競争が資源分割モデル(多次元類似限界モデル)に従うとき,群集内平均形質値の変化は,種選択係数(種の内的自然増加率の形質値に対する回帰係数)と形質分散の積に比例する。種数が多い場合,形質が種の競争能力を左右する場合でも,群集内形質変化は種間相互作用によってほとんど影響されず,群集内の形質分散と種選択によってほぼ決まる。ただし,このことは,群集が動的平衡状態にあること,種間競争が対称的である資源分割型であることが条件である。また,多形質の場合は,形質の応答が形質間の共分散に左右されることがわかった。
さらに,形質間の共分散と群集内平均形質値の変化から,群集変動をもたらした環境因子を推測する方法を考案した。適用例として,霞ヶ浦動物プランクトン群集の機能形質を整理したうえで,霞ヶ浦長期モニタリングデータに基づいて,動物プランクトン群集における同化効率(生態効率)の長期変動を解析した。また,環境要求性に関する機能形質の解析も同時に行い,同化効率変化に対する環境要因(温度変動,栄養塩負荷量)の影響評価を試みた。動物プランクトン群集の平均同化効率の時系列データに対して,特定期間内の周期変動をウェーブレット解析によって調べた。その結果,比較的短周期のピークが機能形質間で一致し,水温の変動に対して2ないし3年遅れでミジンコ群集が同調していること,群集レベルの同化効率も同様に共変動していることがわかった。水温の長期的変化に反応して,生態系機能が応答していることが示唆された。