| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) F1-07
琵琶湖は、日本の湖の中でも特に豊かな生物相を有する。報告されている水生動植物1000種あまりのうち61種(亜種、変種を含む)が固有種である。琵琶湖の生物群集は、外来種の移入や、湖岸整備、人為的な水位調整などといった人間活動の影響を受けて変化しているといわれている。生物群集の変化を論じるためには現在と過去の状態を比較することが必要だが、琵琶湖の食物網が過去どうであったのかという問いに対する具体的な研究は少ない。
そこで、琵琶湖総合開発が行われる以前であり、まだブラックバスやブルーギルなどの外来魚の影響が顕著ではなかった1960年代に注目し、文献調査に基づいた食物網構築を試みた。食物網構築に必要な食性に関する情報は、原則的に胃内容調査のデータを収集し使用した。今回の研究では、扱った生物種に関してはすべて連鎖するような、50個のノード、201本のリンクから成る食物網が得られた。だが、複数の調査論文を総合して食物網構造を決定する過程で解像度の統一に関する問題が生じた。ある調査では種レベルでの同定がなされているのに、他の調査では機能群に基づいた同定がなされるなど、データ間で解像度が一定でなく、しばしば項目のオーバーラップが発生した。これらの問題を解決するために解像度を調整することで複数の食物網を構築し、これらの食物網の構造的特徴を比較した。本発表では、琵琶湖食物網の構造的特徴と、食物網構築方法への食物網構造指標の依存性についても考察したい。