| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F1-11

高水温によるサンゴ大規模白化の短期的”勝者”は長期的にも”勝者”だったか?

R. van Woesik (Florida Inst Tech), *酒井 一彦(琉球大・熱生研),A. Ganase (Florida Inst Tech), Y. Loya (Tel Aviv Univ)

サンゴ群集(造礁サンゴとソフトコーラルの群集)は近年、世界的に高水温ストレスの影響を受けている。沖縄県瀬底島南東岸のサンゴ礁原において我々は、1997年~2010年の間に7回、サンゴ群集の調査を行った。1998年夏季に水温が平年よりも2.6℃上昇し、高水温と強光が原因でサンゴの大規模白化が起こり、サンゴ群集の被度が85%減少し、造礁サンゴの種数が61%減少した。特に樹状サンゴが強く影響を受け、ほとんど全てが死亡した(短期的“敗者”)が、塊状サンゴは白化したものの、多くが生き残った(短期的“勝者”)。本研究の目的は、短期的な“勝者”と“敗者”が、長期的にはどうなるかを検討することである。大規模白化後約10年で、造礁サンゴの被度と種数は大規模白化前と同程度に回復したが、種構成は変化した。短期的“勝者”の多くは、成長が遅かったため、回復した群集では優占とならなかった。長期的“勝者”は、(1) 短期的“勝者”で、親の近くに幼生が定着する繁殖様式(幼生保育)を持つ種、(2) 短期的“敗者”で、高水温期に生き残った部分から、破片分散を含め急速に成長した種、(3) 短期的“敗者”で、大規模白化後幼生加入が成功した種、であった。群体形がテーブル状とコリンボース状(短い枝状)のミドリイシ属数種は、上記(3) の長期的“勝者”であったが、2004年以降の新規加入はほとんどなく、メタ個体群の範囲内での親サンゴの減少により、幼生の供給量が減少していることが示唆された。サンゴの世代時間は、以前考えられていたよりは短いことや、サンゴに共生する褐虫藻には温度耐性の異なる遺伝子型があることから、サンゴの高水温への適応や順化の可能性を議論する。


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