| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F2-02

耕作地の放棄に伴うチョウ群集の変化

大脇淳(新潟大・超域),小川弘司(白山自然保護セ),竹谷宏二,富沢章(石川県・昆虫館)

中山間地の里山では、農業の衰退や人口の減少によって二次林や草地だけでなく、耕作地まで放棄されているが、耕作地の放棄によって里山の生物群集がどのように変化しているかは十分に調査されていない。そこで、本研究では、耕作地放棄の程度が異なる7集落において、1955年から2005年の間の耕作地の利用様式の変化と現在のチョウ群集を調査し、耕作地の放棄に伴うチョウ群集の変化を調べた。

調査地は、石川県白山市にある大日川流域の7集落を選んだ。空中写真、現地調査および聞き取り調査によって、1955年、1977年、2005年の土地利用図を集落ごとに作成し、1955年の耕作地が2005年にはどのような土地利用になっていたかを解析した。各集落に放棄地と耕作地を通る300mの調査ルートを設置し、2005年5~10月に毎月2回、ルート上で観察されたチョウの種数と個体数を記録した。また、調査ルートの左右両側の環境を調べ、放棄地の割合を計算した。

集落の人口は、1955年には120~194人の間であったが、2005年には半分以下に減り、少ないところは3人であった。人口減少率が大きな集落ほど、耕作地の放棄率も高い傾向にあった。チョウは、44種1457個体が観察された。世代数と利用可能な食草の幅に基づいて、チョウをスペシャリスト、ジェネラリスト中間に分けたところ、スペシャリストの種数は耕作地の放棄に伴い有意に増加したが、ジェネラリストの種数は逆に減少し、中間の種の種数は有意な関係がなかった。個体数も似た傾向を示し、スペシャリストと中間の種は耕作地の放棄に伴い有意に増加したが、ジェネラリストでは有意な関係はなかった。

中山間地の里山では、人口の減少に伴い耕作地の放棄が進行し、安定的な環境が増えた結果、スペシャリストの増加とジェネラリストの減少によってチョウ群集が変化していた。


日本生態学会