| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F2-07

栄養モジュール動態の生息地特性への応答

梅田隆利(龍谷大・理工),近藤倫生(龍谷大・理工)

生物群集における生物種間の捕食・被食関係の連鎖を食物連鎖と呼ぶ。食物連鎖の長さをあらわす食物連鎖長は、食物網の構造的特徴を検討するために用いられ、その決定要因を解明する事は群集構造の動態の仕組みを解く上で重要であると考えられてきた。現在まで、生息地の特徴に関連した食物連鎖長の決定要因として、「生産性」や「生態系サイズ」があげられている。さらに、それらが共役的に作用(生産性×生息地サイズ)する「生産的空間」を合わせ、これら3つの要因が食物連鎖長を説明すると考えられてきた。しかし、実証研究の結論の間には不一致がみられる。食物連鎖長の決定要因として生態系サイズ仮説を支持する野外実証研究がある一方、生産的空間仮説を支持する結果も発表されている。これをふまえると、3つの要因のいずれかの重要性ではなく、これら3仮説の相対的役割を総括した研究が必要であろうと思われる。本発表では、「どの仮説が成立するかは想定する空間スケールによって変化する」との発想に基づきおこなった理論研究の結果を発表する。生息地の特徴が食物連鎖長に及ぼす影響を扱った従来の理論モデルでは、そこに働いている生物学的過程の空間スケールの問題が見過ごされてきた。具体的には、想定する捕食者の行動の空間スケールに依存して、餌密度が捕食者密度に及ぼす影響が変化しうることが考慮されていなかった。このことを念頭に、生息地サイズが植食者の採餌効率に及ぼす影響を考慮し、最も単純な「食物連鎖」である植物-植食者の2種から構成される栄養モジュールのメタ群集動態を理論モデル化し、生息地の特徴に依存して群集構造(存続せず・植物のみ・植物—植食者共存)がどのように変化しうるかを解析した。


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