| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) G1-06
1998年の大規模サンゴ白化現象によって、沖縄本島周辺のサンゴ群集は壊滅的な打撃を受けた。幼生の分散距離が短いトゲサンゴは、白化後、沖縄本島への加入がほとんどなく、個体群の回復は確認されていない。本研究では慶良間諸島に現在も残るトゲサンゴ個体群の存続可能性と、沖縄本島での回復可能性を推定した。
慶良間諸島座間味島うるのさちの水深約3mのリーフ上に定点方形区(5×5m)をもうけ、定期的な観察からトゲサンゴ個体群の変遷を追跡した。今回は、2009年と2010年に撮影した画像を解析に用い、個体の生存関数や成長率、部分死亡率、および幼生と破片の加入量を推定した。次に、個体群の動態を予測するために、個体ベースモデルを作成した。ここで、個体の生存や成長は推定した関数形に従って確率的に決まるとした。
解析の結果、うるのさちの個体群は緩やかな減少傾向にあり、20年後には消滅の可能性が高いことが明らかとなった。また、裸地から個体群が回復するためには、継続的な幼生の大量加入が必要であったことから、沖縄本島では今後もトゲサンゴの回復は望めないと考えられる。さらに、個体群の再生を促すために個体の移植を考えた場合でも、1度の移植では個体群は回復できないことが明らかとなった。以上の結果をふまえて、沖縄・慶良間海域のトゲサンゴ個体群の今後を議論する。