| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) G1-10
ミヤマシジミ(Lycaeides argyrognomon)は、本州の宮城県から岐阜県にかけて記録があるが、2003年以降に確認された生息地数はそれ以前の約半数に急減し、環境省絶滅危惧Ⅱ類に指定されている(環境省動物分布調査報告書,2002)。山梨県内においても、1970年以降約100メッシュあった生息地が2005年以降は約10メッシュのみ(4メッシュは今回の調査地域内)の危機的状況にあり、絶滅危惧Ⅱ類に指定されるとともに早急な保全対策が必要と考えられている。
演者は、2003年以降富士山北麓地域を中心とした山梨県内で、本種の保全のための生態学的基礎調査を継続してきた。Watanabe & Hagiwara(2009)では、本種の特定の個体に特定の数頭のクロオオアリが幼虫期から羽化するまで随伴するという新しい忠誠的共生関係を発見したことを報告した。また、Ômura , Watanabe & Honda(2009)では、本種幼虫・蛹と随伴アリ4種の体表炭化水素の分析結果を報告し、これまで知られているCHCの化学擬態とは異なる機構で共生関係を築いているのではないかと考えた。
今回は、富士山北麓梨ヶ原地域(本種の地域個体群が4個、それらを包含するメタ個体群が1個存在すると考えられる地域)で、2004~2006年に計132日間実施した幼虫~成虫のルート・センサス調査および成虫のmark & recapture 法による、2令以上の幼虫1412頭、成虫雄1465頭・雌637頭の調査結果を報告し、各地域個体群及びメタ個体群の内部構造について考察する。