| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G1-11

太平洋クロマグロ0歳魚の漁獲死亡率推定を目的とした標識放流計画の検討

*岩田繁英(水研センター・遠水研),市野川桃子(水研センター・遠水研),竹内幸夫(水研センター・遠水研)

標識放流実験とは,標識を対象個体に装着,放流後,放流位置・時間と個体が回収された時間・位置から移動率,死亡率等の推定を直接行う手法である。この手法は多くの魚類,陸上動物で行われている。しかし,実験計画や標識放流数の不足により,実際の管理に有用な推定値が得られた例は多くない。特に,広い海域を生息域とする高度回遊性魚類の標識放流には,実験計画段階での十分な検討を必要とする。遠洋水産研究所(現水産総合研究センター)と全米熱帯まぐろ委員会が1980年代に,水産総合研究センター・高知水産試験場では、1990年代より土佐湾で太平洋クロマグロの0歳魚を対象に,自然死亡率推定のための標識放流実験を実施した。その結果から推定された0歳魚の自然死亡率は,標識の放流年により異なる値を示し,自然死亡率に年変動のある可能性が示唆された。しかし,実際に自然死亡率に年変動がある場合,その値を正確に推定するためには十分な放流数の確保が必要である。

本研究では、シミュレーションモデルを用いた標識放流実験計画の検討を目的とし,太平洋クロマグロ0歳魚の自然死亡率,漁獲死亡率の推定を目標とした標識放流実験を対象とする。

シミュレーションモデルは遠洋水産研究所・高知水産試験場での実験結果を基に,空間構造を仮定しない単純な構造のモデルを作成する。次にシミュレーションモデルで用いた真の自然死亡率や漁獲死亡率と推定値との差を考察する。最終的に太平洋クロマグロ0歳魚の自然死亡率,漁獲死亡率の推定精度が向上すると期待される最低限必要な放流尾数,実験の継続年数,報告率について検討する。


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