| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) G2-02
腹足類の形態と生息地との関係を明らかにしようと試みた.腹足類では「捕食者に対する防御」,「殻形成効率」,「姿勢の安定性」の三つが形態を決める要因としてよく挙げられており,各機能パラメータを見積もる定量的な研究もなされてきた.我々はこれまでに理論形態モデルを用いて軟体部率と力のモーメントにより殻形成効率と姿勢の安定性を見積もることで,(1)これら二つの機能は螺塔の高さと臍の広さに関して機能的トレードオフの関係にあること,(2)殻口を巻軸に対し外側または反頂側へ傾けることによって殻形成効率と姿勢の安定性の機能的トレードオフが緩和されること,を明らかにした.また,414標本(382種)を測定したところ,その多くが機能的トレードオフの緩和される殻口の傾きを持つことがわかった(Noshita et al., submitted).
本研究では,殻頂-反頂方向の殻口の傾きについて生息地間の差異を調べた.その結果,(1)海生種は陸生種に比べて反頂方向への殻口の傾きが小さいこと,(2)螺塔が高いほど反頂方向への殻口の傾きが小さくなる傾向があり,この傾向は陸生種でより強いこと,がわかった.こうした陸-海生種間の殻頂-反頂方向の殻口の傾きについての差異を「流体力と摩擦力による影響を考慮した姿勢の安定性」の観点からどの程度説明できるかを明らかする.
Noshita, K., Asami, T., Ubukata, T., (submitted) Functional constraints on morphological variation in gastropod snails.